臨床検査技師による超音波検査ブログ③ event_note2022.04.22黒澤です久しぶりのブログ記事になりましたシリーズでお届けしている臨床検査技師によるお役立ち情報です 以前の記事はこちら臨床検査技師による超音波検査ブログ①https://umeoka-cl.com/higashinagasaki/blog/5674臨床検査技師による超音波検査ブログ②https://umeoka-cl.com/higashinagasaki/blog/5883 今回は人間ドックなどでオプションとして追加できる腫瘍マーカーについて解説しますまず腫瘍マーカーとは何ぞやという方もいると思いますのでそのあたりから… 腫瘍マーカーというのは名前の通り腫瘍、つまり癌などの悪性新生物が体にできたときに血液内で増加する物質を測定する検査項目です人間ドックや病院の検査で腫瘍マーカーを測定する目的は① 癌が見つかった場合の経過をみる② スクリーニング(癌が発生しているかどうか予測を立てる)③ 腫瘍マーカーを測定して高かった場合に経過をみる 大きく分けてこんな感じになるかと思います まずは①から病院で癌が見つかった場合は手術などで切除もしくは化学療法などで抑制・治療を行うのですが、癌細胞が無くなったり活動が抑えられた場合は腫瘍マーカーで測定する物質を作り出すものが減ったり無くなったりするので腫瘍マーカーの数値自体が下がっていきますその数値を術後経過とともに観察していくことにより、再発・転移等の診断に繋げていきます 次に②スクリーニング目的は人間ドックなどでオプション項目として選択できるなど、ガンが気になる方が自由に検査項目を選びます選べる項目は施設によってさまざまだとは思いますが、オプションとなるので人間ドック料金+項目数の料金が掛かってきますお察しの通り、項目数に比例してお値段は跳ね上がりますので気になる部分を厳選して調べたいところですね ③の腫瘍マーカーは癌の発生する部分によって上昇する項目が全く異なります以下に代表的な項目と対象部位を紹介しますが、このあたりは『腫瘍マーカー』で検索すると山ほど情報が出てくると思いますので、検査技師の経験からプチ情報があれば掲載しておきます体感も含まれるので参考程度にしてもらえればと思います ・CEA最も一般的な腫瘍マーカーだと思います主に消化器系のがん(大腸・直腸・胃)で上昇する項目ですが、ほかにも肺がん・婦人科系のがんなどでも上昇しますプチ情報として、この項目はタバコを吸っているだけでも上昇します癌があっても無くても上昇するみたいなので、血液検査の経過判断が難しくなります ・AFP肝細胞癌で上昇する腫瘍マーカーですこの項目は肝細胞癌に特化している感じです肝臓が気になる方はコレを選択すると良さそうですプチ情報として今までの経験上、肝細胞癌をエコー等で先に見つけて血液検査でAFPを調べてみても数値は正常だったこともありますドックでは腹部エコー検査も含まれていると思いますが、血液検査だけでは無くいろいろな検査を複合して実施していくことが重要になりますね肝細胞癌の項目としてはほかにPIVKA-Ⅱというものもあります ・CA19-9膵臓癌、胆嚢・胆道癌で上昇する腫瘍マーカーです特に膵臓癌に関しては、一般的な人間ドック・健診の腹部エコーでは発見しづらいと言われています症状が出て、詳しい検査(MRIなど)で発見されたときには既に手術もできない状態だった…というのは自分の過去の経験でもある話です ・CA-125、CA15-3婦人科系の癌で上昇する項目ですCA15-3は乳がんに特化した項目ですが、CA-125は乳がん、卵巣がんに加えて肺がん、膵臓癌でも上昇がみられる広範囲マーカーですプチ情報として、学校で腫瘍マーカーを覚える時は5が付くものは婦人科系マーカー!と覚えました ・SCC婦人科系の腫瘍マーカーとして代表的なもののひとつですこちらは子宮がんのマーカーとして主に測定されますが、肺がんでも上昇がみられます ・CYFRA(シフラ)、ProGRP肺がんに関してはいろいろと複雑で、肺の中でも癌の発生する部位によって上昇する項目が違いますCYFRAは肺の扁平上皮癌で上昇ProGRPは肺の小細胞癌で上昇します肺がんが気になる方はこの両方を検査すると良いでしょう ・TPAこちらは広範囲マーカー人間ドック時スクリーニングとしての腫瘍マーカーとしては便利ですいろいろな癌で数値が上昇するので、臨床診断の場面では扱うのが難しい項目です ・P53抗体割と新しい腫瘍マーカーこちらは大腸がん・食道がんの診断に測定されます比較的早期癌の段階で上昇する検査項目なので、早期発見という目的で有用なのかもしれませんプチ情報として、自分はこのp53抗体の治験に関与していた事があります研究目的として採血のついでに治験を説明して、1本多く採血を取らせてもらってーという感じでしたすこしだけでも関与していた事もあり、ちょっと気になる腫瘍マーカーです 人間ドックで選べる項目としてはこんなところだと思います 腫瘍マーカーは実際にガンが無くても数値が上昇することがあります腫瘍マーカーが高値で精密検査を受けたけれど、ガンが見つからない場合はどうするか?その場合は定期的に採血をして数値の変化がないか確認する事が重要になりますもちろん、健診採血や腹部エコー、レントゲン検査など一般的な健診で実施している項目を定期的に検査しながら経過を観察していくことも大事です◎ 健康的な毎日を送るため、適切な検査を選択していきましょう!