糖尿病 ~早期の対処で合併症予防を・肝臓内科とも密接なかかわりが~ |池袋・豊島区の東長崎駅前内科クリニック

糖尿病とは?

 

糖尿病とは、「インスリンの作用が十分でないため、ブドウ糖が有効に使われずに血糖値が普段より高くなっている状態」と定義されます。

糖尿病患者数及び糖尿病が強く疑われる者の割合については、厚生労働省の平成28年(2016)「国民健康・栄養調査」による要点は以下のとおりです。

 

患者・予備群の数

「糖尿病が強く疑われる者」の割合は、12.1%であり、男女別にみると男性16.3%、女性9.3% である。「糖尿病の可能性を否定できない者」の割合は12.1%であり、男女別にみると男性 12.2%、女性12.1%である。

「糖尿病が強く疑われる者」は約1,000 万人と推計され、平成9年(1977)以降増加している。また、「糖尿病の可能性を否定できない者」も約1,000 万人と推計され、平成9年(1977)以降増加していたが、平成19年(2007)以降減少している。

 

糖尿病でよく聞く、「インスリン」ってどんな働きをしているの?

私たちは食物から栄養を摂取して生命を維持しています。食物の成分のなかで、体のエネルギー源となるものに炭水化物、脂質、たんぱく質がありますが、多くの人はこの3大栄養素の中で、炭水化物を最も多く摂取しています。

ごはん、パン、麺類などが多く炭水化物を含む食品の代表格ですが、これらの食品を摂取するとそのほとんどが消化によって腸の中でブドウ糖となり、小腸から吸収されて血液のなかに入ります。

すると血液中のブドウ糖の量(血糖値)が高くなります。 (血糖値というと血液中の糖分全体を指すように感じますが、実は血液中のブドウ糖の量のことを血糖値といいます。

検査結果のなかには血漿ブドウ糖値と表記されることもありますが、血糖値と同じ意味です)

 

 

 

健康な人の場合、食事をして血糖値が上がりやすいこのような状況でも、血糖値は適度な範囲にコントロールされ、過剰に増加しません。
血糖値が上がると、その変化を膵臓に存在する膵β細胞が感知してインスリンを血中に出すからです。
インスリンには血漿のブドウ糖を筋肉や脂肪に取り込ませる作用があるため、結果として、食後に血糖値が上がり過ぎないように作用します。
一方、空腹時のインスリンは低い値で維持されるため、ブドウ糖が筋肉や脂肪に必要以上に取り込まれることはありません。これらの作用を介して、血糖値は空腹時でも食後でもちょうどよい範囲である70mg/dlから140mg/dlに保たれています。

 

 

 

糖尿病は大きく分けて1型と2型、2つのタイプがあります

 

糖尿病になると、体内のインスリンの作り方や使い方に問題が起き、摂取した食物エネルギーを正常に代謝できなくなります。

インスリンはすい臓で作りだされて血糖を正常範囲に保つ役割をしますが、インスリンの作用不足により、血糖が高くなってしまうのです。
糖尿病には大きく分けて次の2つのタイプがあります。

 

2型糖尿病(インスリン分泌不全とインスリン抵抗性による糖尿病です)

 

すい臓はインスリンを作り出しますが、2型糖尿病では、量が十分ではない(インスリン分泌不全)か、作られたインスリンが十分作用しません(インスリン抵抗性)。以前は「インスリン非依存型糖尿病」と呼ばれていました。

 

2型糖尿病は最も一般的な糖尿病で、10人に9人以上はこのタイプです。若い人でも発症する場合もありますが、40歳を過ぎてから発症する場合がほとんどです。


糖尿病になる要因はさまざまで、食生活などの環境因子と体質(遺伝)の組み合わせで起こると考えられています。

糖尿病と肥満を結びつける方がいらっしゃるかもしれませんが、病気の名前に「糖」という文字が入っているからといって砂糖などの甘いものの取り過ぎといったことだけが原因ではないのです。

 

なお、2型糖尿病の治療の基本は適切な食事指導と運動で、これらを続けながら薬による治療を行います。

2型糖尿病の治療に使われる薬にはさまざまな種類があり、糖尿病の状態に合わせて使います。

 

最初は飲み薬から始めることが多いですが、血糖値が下がらないときはGLP-1受容体作動薬という注射が選択肢の1つとなります。また、インスリンの分泌量が十分でないときは、注射でインスリンを補います。

 

2型糖尿病の原因

2型糖尿病は、次のような人に起こりやすいことがわかっています。

  • 40歳以上の人
  • 太りすぎの人
  • 家族に糖尿病の患者がいる
  • 著しい運動不足

 

主な症状

2型糖尿病は、初期の段階では自覚症状がまったくないことが多く、症状があらわれるとしても、非常にゆっくり、少しづつあらわれます。

  • 疲労感
  • 皮膚が乾燥して痒い
  • 手足の感覚が低下する、または、チクチク指すような痛みがある
  • 感染症によくかかる
  • 頻尿
  • 目がかすむ
  • 性機能の問題(ED)
  • 切り傷やその他の皮膚の傷が治りにくい
  • 空腹感やのどの渇きがひどくなる

 

2型糖尿病の発病は遺伝性による場合があるため、上にあげた症状のうち、あてはまるご家族(父母、兄弟姉妹、子ども)には、糖尿病の検査をおすすめします。また、適切な食事をとり、適度な運動をして肥満に気をつけていれば、2型糖尿病を防ぐ、あるいは発症を遅らせることができます。

いずれの型の糖尿病にせよ糖尿病の治療に最も大きな役割を果たすのはあなた自身です。

ご自分の糖尿病を管理するために何ができるか、情報を集めましょう。糖尿病について知識を増やすことは大切なことです。糖尿病のことを知れば知るほど、糖尿病と上手に付き合っていけるからです。

 

1型糖尿病(インスリン欠乏による糖尿病です)

すい臓がインスリンをほとんど、またはまったく作ることができません。
よって、インスリンを注射しなければなりません。このため、以前は「インスリン依存型糖尿病」とも呼ばれていました。

糖尿病の患者さんのうち、1型糖尿病は10人に1人もいません。
若い方の糖尿病では1型糖尿病が多いですが、年齢に関係なく発症が見られます。

 

主な症状

症状はふつう突然あらわれます。

  • 普段よりのどが渇く
  • 頻尿
  • 急激な体重減少
  • 疲れがひどい

1型糖尿病の原因

1型糖尿病の原因は正確にはわかっていませんが、関係する因子としてあげられるのは次の2つです。

 

  • 1型糖尿病にかかりやすい体質を持っている。
  • 何らかの原因により、インスリンを作っている、すい臓の一部が破壊される。

 

いずれの型の糖尿病にせよ糖尿病の治療に最も大きな役割を果たすのはあなた自身です。

ご自分の糖尿病を管理するために何ができるか、情報を集めましょう。糖尿病について知識を増やすことは大切なことです。糖尿病のことを知れば知るほど、糖尿病と上手に付き合っていけるからです。

 

糖尿病の予防と治療

 

糖尿病があっても、血糖をコントロールして、糖尿病がない人と同じ健康寿命(注)を保つことが、糖尿病の治療の目的です。

注:健康寿命...健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間
健康日本21(第2次)の推進に関する参考資料 より

糖尿病とは、慢性的に血糖値が高くなる病気です。慢性的に血糖値が高いと、糖尿病の合併症によって生活の質(QOL:キューオーエル)が低下し、さらには寿命にも影響します。ですから、血糖値を良い値に保つ事が予防・治療の基本です。

 

①食生活の見直し(基本の予防)

糖尿病予防につながる食事のポイント

  • ・朝、昼、夜しっかり食べる。
  • ・ゆっくり、よく噛んで食べる。
  • ・食物繊維を多く含むもの(野菜、海藻、キノコなど)を食べる。
  • ・腹八分目でストップしておく。
  • ・寝る前に食べない。
  • ・野菜→汁物→主菜→ご飯の順番でバランスよく食べる。
    (糖の吸収を緩やかにし、食べすぎを防いでくれます。)
  •  

まずはこれらの「ちょっとした心がけ」を毎日の生活に取り入れることから始めてみましょう!

うまく続けられないことも、もちろんあります。
そんなときは、時々、好きなものを食べてもよいご褒美の日を作ってもよいでしょう。 また、一度に全部を守ろうとすると難しいかもしれません。まずは自分にできそうなものを2、3個見つけて、守りきるということを目標にしてみてもいいかもしれません。

 

また、当院では患者様への栄養指導も行なっております(指導には医師の診察が必要です)。詳しくはスタッフまでお尋ね下さい。

 

②運動療法

 

運動には以下のようなさまざまなメリットがあります。

・運動によって血液中のブドウ糖、脂肪酸の利用が促進され、血糖値が下がります。
・2型糖尿病では、低下しているインスリンの働きが強まります。
・エネルギーを消費し、減量効果 ・肥満の防止になります。
・爽快感、活動気分が向上し、ストレス解消効果があります。
・高血圧や脂質異常症などのその他の合併症予防になります。

 

まずは動いてみよう!


運動にもたくさんあって、どれをやろうか迷ってしまいますよね。
好きなスポーツがあればそれを続けるのが良いですが、特に思い浮かばない方はまず「一日30分程度の有酸素運動(ウォーキングやジョギング,水泳など)と週2,3回の筋トレ」をやってみるのはいかがでしょうか。

 

  • ・準備運動と整理運動は、体にこれから動く心がまえや動いたあとのクールダウンとしてとても大切。運動の前後には、必ず行うように心がける。
  • ・軽い運動からはじめ、少しずつ運動量を増やす。
  • ・体調にあわせ、無理をしないようにする。
  • ・なるべく毎日できる運動を選ぶ。楽しむことが長く続ける秘訣。
  •  

でも、忙しくてなかなかまとまった時間がとれない方は、運動なんて出来ないと思っていませんか?

 

「通勤の駅を1つ手前で降りて歩いてみる」「エレベーター・エスカレーターをできるだけ使わずに階段を利用する」などもひとつの運動の方法です。
このように日常生活の中にちょっとした工夫を取り入れることで、糖尿病になりにくい体をつくります。

 

注意点として、病気の状態によっては運動が逆効果になってしまうこともあります。運動療法を始める前はもちろん、始めた後にも年に1回くらいは、主治医のメディカルチェックをうけましょう。

 

③薬物療法

 

基本の食事療法と運動療法を2~3ヵ月続けているにもかかわらず、良好な血糖コントロールが得られない場合、経口薬や注射薬による治療が必要となります。

 

糖尿病の薬にはいろいろな種類があります。 飲み薬では、インスリンの分泌を良くするもの・効きを良くするもの、食事でとった糖の分解・吸収を遅らせるもの、糖の排泄を促すものがあります。

注射には、インスリンの分泌を促す注射や、インスリンそのものを外から補う注射があります。

 

血糖コントロールの方法は、人によって様々です。ご自身の血糖コントロールの方法について、詳しくは主治医や医療スタッフにご確認ください。

 

また、血糖値のコントロール以外にも気を付ける事として、肥満や高血圧、脂質異常症は動脈硬化や内臓の障害に影響します。体重は、標準体重(BMI=22)より多い方は標準体重を目標として減量しますが、現時点でそれよりかなり体重が多い方は、今の体重を5%減らすことを当面の目標とします。

コレステロールや脂肪肝についてはこちらも併せてご覧ください。

体重

標準体重(kg)= 身長(m)×身長(m)×22

血圧

糖尿病の方の目標値

  • 収縮期血圧:130 mmHg未満
  • 拡張期血圧:80 mmHg未満

*脳血管障害・冠動脈疾患のある方
  140/90mmHg未満

*75歳以上の高齢者の方
  150/90mmHg未満

無理なく下げられるのであれば
  140/90mmHg未満

血清脂質

  • LDLコレステロール:120 mg/dL未満

*冠動脈疾患のある方:100 mg/dL未満

  • HDLコレステロール:40 mg/dl以上
  • 中性脂肪(早朝空腹時):150 mg/dl未満

 

糖尿病に必要な検査は?

血糖値を調べるための血液検査はもちろん、定期的に合併症の状態を確認するための検査を受けることも大切です。

 

糖尿病の合併症を調べる検査

  • 神経障害:アキレス腱反射、振動覚、神経伝導検査、心拍変動検査(CVRR)
  • 網膜症:眼底検査
  • 腎症:血液検査(BUN、クレアチニン)、尿検査(尿中アルブミン、尿タンパク)
  • 足病変:足の定期チェック(ひび割れ、白癬(水虫)、たこ、うおのめ、足の変形、など)
  • 大血管症:頸動脈エコー、心電図、胸部X線、血圧脈波検査(ABI+PWV)
  • 歯周病:歯科診察
  • 大腸カメラ、胃カメラなどの内視鏡検査(糖尿病により、がんのリスクが上がるため)

 

糖尿病の症状が進行したらどうなる?

 

 糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんどありませんが、進行すると多飲や頻尿、皮膚のかゆみといった高血糖による症状が現れます。2型糖尿病ではこれらの症状が少しずつ、ゆっくりと現れますが、1型糖尿病では突然症状が現れるという違いがあります。

いずれの場合も糖尿病の末期症状には以下のようなものがあります。

・尿が出にくくなる
・体のだるさやむくみ
・視力障害(視力低下や失明など)
・狭心症や脳卒中
・腎臓の機能低下(腎不全による人工透析や腎移植など)
・手足のしびれ
・手足が化膿しやすくなる(潰瘍や壊疽など)

 

末期症状が出てからの余命

末期の症状が現れた場合、平均余命は2型糖尿病と1型糖尿病で変わってきます。

2型糖尿病

50歳前に糖尿病を発症した場合、平均寿命が10年短くなるといわれています。また、健常者と比較して2型糖尿病患者は75歳より前に死亡する確率が2倍程度高くなることがわかっています。

1型糖尿病

1型糖尿病患者の70歳生存率は、男性では健常者が76%に対して1型糖尿病患者は47%、女性の場合で健常者が83%に対して1型糖尿病患者が55%と低くなることがわかっています。

 

糖尿病は合併症を発症すると余命がより短くなります。そのため余命宣告をされたとしても治療を続け、余命がさらに短縮しないようにする必要があります。

糖尿病を発症すると周囲の手助けが必要な場面も出てきます。例えば以下のようなケースでは家族など周りの協力が必要になります。

・バランスのよい食事を用意できない
・間食をやめられない
・認知障害があり1人での外出が難しい
・眼が見えづらくて注射の単位を正確に合わせられない
・低血糖で倒れた

なお、どのような手助けが必要かは患者の年齢や病状、生活習慣や仕事の有無でも変わります。糖尿病患者の手助けをするためには、家族や周囲の人が糖尿病に対する正しい知識を持つことが重要になります。

特に低血糖で倒れた場合は患者が自分で対応することができません。このような場合に備えて、あらかじめ家族や身近な人に患者自身が対処法を伝えておくことも重要です。

 

特に心筋梗塞や糖尿病性腎症などの合併症を発症すると寿命への影響が大きくなります。「糖尿病は完治することはできない」といわれていますが、早い段階で糖尿病であることを発見し、血糖コントロールなどの治療を始めることで合併症や症状の悪化を防ぐことにつながります。

少しでもおかしいと思うことがあれば自己判断せず、医師に相談することが大切になります。

 

 

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