臨床検査技師による超音波検査ブログ② event_note2021.10.05 こんにちは。スタッフの黒澤です夏が過ぎ、少しずつ過ごしやすくなってきましたねまだまだ気温の変化はありますので、体調に気を付けて生活をしていきましょう さて、前回に引き続き超音波検査のお話です前回のブログ内容はこちら。今回は健康診断等で測定する血液データとエコー検査を紐づけて説明していきます 健康診断ではそれぞれ項目が分類されて判定をしていることが多いです大きく分けると・肝機能検査(AST、ALT、γGT)・脂質検査(総コレステロール、中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール)・糖代謝検査(空腹時血糖、HbA1c)こんな感じでは健診で異常を指摘されて、精密検査を受ける場合はどこを気にしたら良いでしょう? まずは肝機能検査で異常が指摘された場合ですAST、ALT、γGTの何れかが異常値と判定された場合は、肝臓に炎症がある可能性があります超音波では脂肪肝の有無を調べます脂肪肝は慢性肝炎の状態ですが、放置すると肝硬変に変化する可能性もありますまた、肝腫瘍などの重大な疾患も隠れている可能性がありますので一度は検査をお勧めします γGTのみが異常値と判定された場合は胆石・胆嚢の炎症・胆管の異常など、胆嚢関係に異常がある可能性があります一般的な健康診断では測定されませんが、D-Bil(直接ビリルビン)T-Bil(総ビリルビン)という血液検査項目があります胆石などで胆管が詰まった状態となると、体全体が黄色くなってくる黄疸と呼ばれる症状が出てきますが、これにはビリルビンが関係していますγGTは飲酒の影響があると言われますが、高値になった場合は病気との鑑別の為に一度は検査をお勧めします 次に脂質検査で異常が指摘された場合です血液中に脂肪分が代謝しきれずに多く存在するという状態なので、脂肪肝の可能性が高くなっています中性脂肪や悪玉コレステロールは動脈硬化の原因となって、高値のまま放置すると心筋梗塞や脳梗塞の原因となりますのでコントロールが必要になりますそのため、腹部エコーに加えて頸動脈エコー等の検査で血管の状態を観察する必要があります 最後に糖代謝検査で異常が指摘された場合です空腹時血糖やHbA1cが高値の場合、糖尿病の可能性が高くなります糖代謝に関係するホルモンは膵臓から分泌されますが、超音波検査で膵臓を見ただけではほとんどわかりません糖尿病の疑いがある方が超音波検査を行う場合、腹部エコーで脂肪肝の有無と頸動脈エコーで血管の状態を観察することが必要となります 超音波検査で膵臓を観察する場合は膵臓癌やIPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)の有無を確認するのが大きな目的ですが、膵臓自体が胃の裏側にある為、観察しづらいというのが現実です膵臓に関しては血液検査でAMY(アミラーゼ)やリパーゼ等の項目や、MRI等での画像検査と併せて診断していくのが一般的です 腹部エコーの話に戻りますが、ここまでのお話で触れなかったのが腎臓脾臓ですね 腎臓の検査は健診項目でいうと尿検査ですこれも項目について説明していくと・尿蛋白 → 腎臓の機能障害・尿潜血 → 腎臓・尿道の傷など・尿糖 → 糖尿病の疑いとなります超音波検査で分かるのは機能障害でいうと慢性腎不全、ネフローゼ症候群など腎結石や尿管結石等になると、結石により腎臓内部・尿の壁が傷つけられて潜血陽性となります 脾臓の検査は腫瘍の有無と大きさを観察します脾臓は古くなった血液の処理工場と言われているのですが、これも働きすぎると負担が大きくなるためサイズが大きくなります健診項目では貧血検査の項目が関係してきます ちょっと内容が専門的になってしまいましたが、一般的な健康診断だけでも病気に関連する項目が割と多いことがわかりますどこか異常が指摘された場合、念のためで腹部エコー検査を希望される方は多いのですが、腹部エコーを実施するだけでもいろいろな病気の可能性の有無が判断できます短時間かつ体に害もなくいろいろと調べられる超音波検査は老若男女問わずお勧めです 次回は人間ドック等でオプションとして検査できる腫瘍マーカーと超音波検査で観察できる臓器の関係性を中心に解説していく予定です。 腹部超音波検査についてはこちらもご覧ください。その他の超音波検査についてはこちらをご覧ください。