持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド®」と睡眠時無呼吸症候群 event_note2025.01.12持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド®」は、肥満治療薬として知られるチルゼパチドを有効成分とする薬剤で、昨年末に国内でも肥満症の適応取れた薬剤です。アメリカでは米国食品医薬品局(FDA)により肥満を伴う中等度から重度の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)患者向けの治療薬として承認されました。 OSASは、睡眠中に上気道が部分的または完全に閉塞されることで、呼吸停止(無呼吸)や浅い呼吸(低呼吸)が生じる疾患です。 肥満はOSASの主要なリスク要因の一つであり、体重減少は症状のOSAS改善に寄与します。 ゼップバウンド®は、GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)およびGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)の受容体に作用し、食欲抑制や血糖値の調節、体重減少を促進します。これにより、肥満患者の体重減少を通じてOSASの症状改善が期待されます。 臨床試験では、ゼップバウンド®を投与された肥満成人のOSA患者において、1時間あたりの呼吸中断が平均25回減少し、プラセボ群の5回減少と比較して有意な改善が認められました。 さらに、治療後、ゼップバウンド®群の42%の患者がOSAの寛解または軽度の無症候性OSAを達成し、プラセボ群の16%を上回りました。 ゼップバウンド®の使用に際しては、以下の点に注意が必要です:副作用:一般的な副作用として、吐き気、下痢、嘔吐、便秘、胃部不快感などが報告されています。 これらの症状が持続する場合は、医療提供者に相談してください。禁忌:甲状腺髄様がん(MTC)の個人または家族歴、多発性内分泌腫瘍症候群2型(MEN 2)の患者、チルゼパチドまたはゼップバウンド®の成分に対する重度のアレルギー反応の既往がある場合は、使用を避けてください。併用療法:ゼップバウンド®は、カロリー制限を伴う食事療法や身体活動の増加と併用することが推奨されます。 また、他のチルゼパチド含有製品やGLP-1受容体作動薬との併用は避けてください。 日本においては睡眠時無呼吸症候群に対しての適応は有りませんが、肥満症患者さんにおいては睡眠時無呼吸症候群を併発されている方がかなり多いのも実情です。 肥満治療においては当院で得意にしている肝臓内科治療のみならず睡眠時無呼吸症候群の検索治療も必須と考えられます。 当院では胃カメラ・大腸カメラなどの内視鏡の際に鎮静剤・麻酔薬を使用することはありますが、睡眠時無呼吸症候群の方はその際に顕著に呼吸状態が悪くなります。 内視鏡検査をきっかけに当院でも睡眠時無呼吸症候群の治療を開始される方が多くいらっしゃいます。脂肪肝治療、睡眠時無呼吸症候群治療、肥満治療の並行した診療は重要となってくると考えます。