肝臓内科で肥満治療を!!

目次

肝臓内科で行う肥満治療の総論

肥満症は、単に体重が増加した状態を指すものではなく、代謝異常や生活習慣病を引き起こす病的な状態です。
肥満は肝臓疾患と密接に関連しています。肝臓内科で扱う非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)やその進行形である非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)との関連が注目されています。
現在、これらの疾患は新たに「代謝異常関連脂肪性肝疾患(MASLD)」および「代謝異常関連脂肪性肝炎(MASH)」として再定義され、肝臓疾患の診断と治療の在り方が進化しています。
MASLDは、代謝異常を伴う脂肪肝を包括的に捉える新しい診断基準であり、従来のNAFLDの問題点を改善する目的があります。この新概念により、脂肪肝の診断と治療の精度向上が期待されています。

  • MASLD(Metabolic Associated Steatosis and Liver Disease:代謝障害関連脂肪性肝疾患)
    脂肪肝の一種で、メタボリックシンドロームと関連があります。
  • MASH(Metabolic Associated Steatohepatitis:代謝障害関連脂肪肝炎)
    MASLDから進行した状態で、炎症や肝硬変のリスクが高まります。

これらの疾患は症状が進行するまで気づかれにくいため、肥満症治療を通じて早期発見・早期介入が求められます。

肥満症治療は、単なる体重減少を目的とするものではなく、肝臓をはじめとした全身の健康を改善するための総合的なアプローチが求められます。
栄養療法、運動療法、薬物療法、さらには外科的治療までを組み合わせ、個別化された治療計画を策定することが肝心です。本コンテンツでは、肥満症の疫学、診断、治療法について、肝臓内科の視点から詳しく解説します。

脂肪肝と肥満症が密接にかかわるため、肝臓内科で肥満症治療を行うことは非常に重要です。

肥満症の疫学

肥満症と脂肪肝の増加

日本国内における肥満人口の増加は深刻です。厚生労働省の調査によれば、日本人成人の約30%が肥満または過体重とされています。
この背景には食生活の欧米化や運動不足があり、それに伴い非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の発症率も増加しています。現在脂肪肝の方は全国で3000万人以上いると言われています。

NAFLDは肝臓に脂肪が過剰に蓄積された状態を指し、その進行形であるNASHでは肝臓の炎症や線維化が見られます。
これらの疾患が放置されると、肝硬変や肝細胞癌への進行リスクが高まるため、早期の診断と治療が不可欠です。
現在、これらの疾患はMASLDおよびMASHとして再定義され、診断基準や治療指針が刷新されています。

肥満症と生活習慣病の関連

肥満症は、糖尿病、高血圧、脂質異常症、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病の主要な要因として知られています。特に内臓脂肪の増加は、インスリン抵抗性や慢性炎症を引き起こし、全身の代謝バランスを崩壊させます。この結果、脂肪肝や心血管疾患のリスクが大幅に増加します。
肥満人口の増加に伴い、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の頻度も増加しています。
肝の脂肪化は、脂肪酸のβ酸化の低下や活性酸素種の産生増加により、炎症や肝線維化を進行させます。
NAFLDの発症には、肥満、インスリン抵抗性、脂質代謝異常などの生活習慣病が深く関与していることが示されています。

肥満症と肝臓疾患の関連性

肥満症が肝臓に与える影響

肥満症は、脂肪肝や代謝障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)、さらにその進行形である代謝障害関連脂肪性肝炎(MASH)の主な原因とされています。
これらの疾患は、肝臓に脂肪が過剰に蓄積されることで引き起こされ、肝臓の炎症や線維化を伴うことが一般的です。
特にMASHは、肝硬変や肝細胞癌へと進行する可能性があり、早期診断と治療が非常に重要です。
肥満症による肝臓への影響は、単に体重が増えるだけではなく、代謝性疾患を悪化させ、全身的な健康状態を悪化させる要因となります。

肥満症に伴う代謝異常

肥満症は、インスリン抵抗性や高脂血症などの代謝異常を伴い、肝臓への脂肪蓄積や慢性炎症を通じて全身の健康リスクを高めます。また、肥満人口の増加に伴い、MAFLDの発症率が増加しています。これは脂肪酸の代謝障害や酸化ストレスが原因で、肥満や生活習慣病が深く関与しています。

2023年の研究では、若年成人男性の16%がNAFLDを、11%がMASLDを患い、食行動がリスクに影響することが確認されました。特に体重への認識が関連しています。さらに、1989年から1999年の間に脂肪肝の発見率が倍増しており、生活習慣の変化が大きな要因とされていますが、詳細な原因解明が必要です。

肥満症の診断

1. 肥満症の診断基準

1-1. 体格指数(BMI)

BMI(Body Mass Index)は、体重(kg)を身長(m)の2乗で割った値で、肥満の程度を簡便に評価する指標です。日本肥満学会の基準では、以下のように分類されています:

  • 標準体重:18.5~24.9
  • 肥満(1度以上):25.0以上
  • 高度肥満(3度以上):35.0以上

肥満症と診断されるためには、単にBMIが高いだけでなく、健康リスクを増加させる代謝異常や合併症が存在する必要があります。

1-2. 腹囲(ウエスト周囲径)

内臓脂肪型肥満を評価するために、腹囲が測定されます。日本では、以下の基準が使用されています:

  • 男性:85cm以上
  • 女性:90cm以上
    腹囲が基準を超える場合、内臓脂肪の蓄積が強く疑われ、肥満関連疾患のリスクが高いとされます。

1-3. 合併症の有無

肥満症の診断において、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の有無が評価されます。これらの疾患が肥満に関連している場合、治療の必要性が高まります。

2. 肥満と代謝異常の関係

肥満は単なる体重増加ではなく、体内のエネルギーバランスの破綻によって生じる複雑な病態です。特に内臓脂肪の増加は、代謝異常を引き起こし、生活習慣病の発症リスクを高めます。

2-1. インスリン抵抗性

肥満に伴い、脂肪組織から放出される炎症性サイトカイン(アディポカイン)や遊離脂肪酸が増加します。これにより、肝臓や筋肉でのインスリン感受性が低下し、以下のような状態が引き起こされます:

  • 空腹時血糖値の上昇
  • 耐糖能異常
  • 2型糖尿病の発症リスク増加

2-2. 脂質異常症

肥満は脂質代謝にも影響を及ぼし、以下のような異常を引き起こします:

  • 高トリグリセリド血症:血中の中性脂肪濃度が高まる
  • 低HDLコレステロール血症:善玉コレステロールの減少
  • 高LDLコレステロール血症:悪玉コレステロールの増加

これらは動脈硬化を促進し、心血管疾患のリスクを高める主要因となります。

2-3. 高血圧

内臓脂肪の増加は、交感神経系の過剰な活性化や血管内皮機能障害を引き起こします。その結果、血圧が上昇し、高血圧を引き起こすリスクが高まります。

2-4. 非アルコール性脂肪性肝疾患(MASLD)

肥満により肝臓に脂肪が過剰に蓄積すると、MASLDが発症します。この状態が進行すると、非アルコール性脂肪性肝炎(MASH)や肝硬変、さらには肝細胞癌へと進行するリスクがあります。

2-5. メタボリックシンドローム

肥満に伴う代謝異常は、メタボリックシンドロームという複合的な病態を形成します。日本の基準では、以下の条件が2つ以上当てはまる場合に診断されます:

  • 腹囲:男性85cm以上、女性90cm以上
  • 血圧:収縮期130mmHg以上または拡張期85mmHg以上
  • 血糖:空腹時血糖110mg/dL以上
  • 脂質異常:トリグリセリド150mg/dL以上またはHDLコレステロール40mg/dL未満

3. 肥満症診断のための検査項目

肥満症を診断するためには、身体計測に加え、以下の検査が実施されます。

  • 血液検査
    血糖値、ヘモグロビンA1c、トリグリセリド、HDL/LDLコレステロール、肝機能(ALT/AST)などの評価を行います。

  • 画像診断
    腹部超音波検査やCTスキャンで内臓脂肪の蓄積を確認します。これにより、脂肪肝の有無や重症度を判定します。

  • 尿検査
    糖尿や蛋白尿の有無を確認し、腎機能の状態を評価します。

  • 血圧測定
    安静時の血圧を測定し、高血圧のリスクを評価します。

4. 肥満症診断の意義と治療の方向性

肥満症の診断は、単なる体重管理にとどまらず、代謝異常や生活習慣病の早期発見と予防に寄与します。診断結果に基づき、栄養療法、運動療法、薬物療法などの多角的な治療を適切に組み合わせることで、患者の健康を長期的に支えることが可能となります。

肥満症は見過ごされがちな病態ですが、早期診断と包括的な治療により、生活の質を向上させることができます。健康診断や専門医の診察を活用し、積極的に肥満症と向き合うことが重要です。

MASLD(代謝異常関連脂肪性肝疾患)とMASH(代謝異常関連脂肪性肝炎)の診断

MASLDおよびMASHは、NAFLDおよびNASHの新たな診断概念として導入されました。これらの疾患は単なる脂肪肝ではなく、以下の特徴を持っています:

  • MASLD: 脂肪肝に加えて、メタボリックシンドロームや糖尿病などの代謝異常を伴う。

  • MASH: MASLDに炎症や線維化が加わり、肝硬変や肝細胞癌のリスクが高い。

診断には、血液検査や肝臓の画像診断が用いられます。また、必要に応じて肝生検が実施され、炎症や線維化の程度が評価されます。

体組成計「InBody」の活用

肥満症の診断には、単に体重やBMI(Body Mass Index)を評価するだけではなく、体脂肪率や筋肉量、内臓脂肪量などの体組成を詳細に測定することが重要です。そのため、医療現場では**体組成計「InBody」**が広く活用されています。InBodyは、肥満症の診断だけでなく、治療の経過観察や効果測定にも欠かせないツールです。以下では、InBodyの特徴と活用方法について詳しく解説します。

1. InBodyとは?

InBodyは、体組成を正確に測定するための医療用デバイスで、**生体インピーダンス法(BIA)**を用いて体内のさまざまな成分を分離して評価します。従来の体脂肪計に比べて高精度で、以下のような項目を詳細に測定できる点が特徴です。

  • 体脂肪量と体脂肪率
    体内に蓄積されている脂肪の量とその割合を計測します。特に体脂肪率は、肥満の程度を評価する指標として重要です。

  • 筋肉量(骨格筋量)
    筋肉量は基礎代謝の向上やエネルギー消費に関与します。筋肉量が少ない場合、肥満症治療では筋力トレーニングが推奨されます。

  • 内臓脂肪量
    内臓脂肪は代謝異常や生活習慣病と強く関連しています。InBodyでは内臓脂肪面積(VFA:Visceral Fat Area)を数値で表示し、リスク評価が可能です。

  • 体水分量
    全身の水分バランスを評価し、むくみや脱水の状態をチェックします。

  • 部位別の体組成評価
    四肢や体幹の筋肉量と脂肪量を個別に測定することで、体型のバランスや筋肉の偏りを評価します。

2. InBodyを用いた肥満症診断のメリット

2-1. 内臓脂肪の詳細評価

肥満症の診断において、内臓脂肪の蓄積状況を正確に把握することは重要です。InBodyでは、内臓脂肪面積(VFA)を具体的な数値で示し、基準値(100cm²以下)を超える場合には生活習慣病のリスクが高いと評価されます。

2-2. 骨格筋量と体脂肪率のバランス確認

肥満症の患者では、筋肉量が不足している一方で体脂肪率が高い場合が多く見られます。InBodyは骨格筋量と体脂肪率を同時に評価し、サルコペニア肥満(筋肉量が少ない肥満)や肥満型体型を分類することが可能です。

2-3. 変化の可視化

治療の経過観察として、体脂肪量や筋肉量の増減を記録することで、患者自身が治療の効果を実感しやすくなります。また、医師や管理栄養士にとっても、治療プランの調整に役立つ情報を提供します。

2-4. 非侵襲性で手軽に測定可能

InBodyは短時間で非侵襲的に測定を行うことができ、患者への負担が少ないため、定期的な測定が容易です。これにより、治療のモチベーションを維持する効果も期待されます。

3. InBodyで測定する主な項目

InBodyが提供するデータは多岐にわたります。以下に、主な測定項目とその意義を解説します。

3-1. 体脂肪率(PBF:Percent Body Fat)

  • 正常値:男性10~20%、女性20~30%
  • 肥満症患者では体脂肪率が基準を超える場合が多く、特に内臓脂肪型肥満が問題視されます。

3-2. 骨格筋量(SMM:Skeletal Muscle Mass)

  • 筋肉量の低下は基礎代謝の低下を引き起こし、肥満の悪化につながります。InBodyでは部位別に筋肉量を評価できるため、偏りのある筋力低下にも対応可能です。

3-3. 内臓脂肪面積(VFA:Visceral Fat Area)

  • 基準値:100cm²以下
  • VFAが増加している場合、メタボリックシンドロームや糖尿病、高血圧のリスクが高いとされます。

3-4. 基礎代謝量(BMR:Basal Metabolic Rate)

  • 基礎代謝量は体重維持のために必要な最小限のエネルギー量を示します。肥満症治療では、この数値を基準に適切なカロリー摂取量を設定します。

4. InBody測定結果を活用した治療の方向性

4-1. 栄養療法の調整

測定結果に基づき、個々の患者に応じた栄養プランを立案します。例えば、筋肉量が不足している場合にはたんぱく質摂取を増やし、内臓脂肪が多い場合には低糖質・低脂質食を提案します。

4-2. 運動療法の最適化

筋力が低下している部位が特定できるため、部位別の筋力トレーニングを推奨します。また、有酸素運動と筋力トレーニングのバランスを取ったプランを作成することが可能です。

4-3. 治療の効果測定

治療開始前後でInBody測定を行い、体脂肪率や筋肉量の変化を数値で比較することで、治療効果を定量的に評価します。

5. InBodyの限界と注意点

  • 測定条件に依存:測定結果は水分バランスや食事内容に影響を受けるため、正確なデータを得るためには測定条件を統一する必要があります。
  • 医療従事者の解釈が重要:測定結果を正しく理解し、治療に役立てるためには専門的な知識が必要です。

InBodyは肥満症診断と治療において非常に有用なツールです。正確な体組成データを活用することで、患者一人ひとりに適した治療プランを提供し、肥満症の克服に貢献します。

その他の診断ツール

  • 腹部超音波検査: 肝臓の脂肪蓄積や線維化を視覚的に確認。

  • CT/MRI: 内臓脂肪の正確な測定。

  • フィブロスキャン:
  • 肝線維化スコア: 血液検査と画像診断を組み合わせて、線維化の進行を評価します。

脂肪肝を伴う肥満症の治療

栄養療法

肥満症治療の基本は、まず生活習慣を見直すことにあります。
中でも栄養バランスを整えることが、肥満症改善と肝臓の健康維持において重要な役割を果たします。
エネルギー摂取を適切に管理し、肝臓の機能をサポートする栄養素を積極的に摂取することが推奨されます。
具体的には、糖質や脂質を過剰に摂取しないよう注意し、野菜や果物、良質なたんぱく質を中心とした食事が理想的です。

ビタミンEやCなどの抗酸化物質を多く含む食品は、肝臓の炎症を抑える効果があるため、積極的に摂取することが望ましいです。また、アルコール摂取を控えることや、適度な水分補給も、肝臓の健康を保つ上で欠かせない要素となります。

1. 肝臓の健康を支える栄養素とは

肝臓の健康を維持するためには、特定の栄養素を意識して摂取する必要があります。肝臓は体内での解毒、代謝、栄養の貯蔵など多くの役割を果たしています。そのため、肝臓をサポートする以下の栄養素が推奨されます。

  • たんぱく質
    肝細胞の修復と再生を助けるために不可欠です。特に、脂肪肝の進行を防ぐためには、良質なたんぱく質が重要です。魚や鶏肉、大豆製品、卵などが優れた供給源です。

  • ビタミンEとC
    これらの抗酸化物質は、肝臓の炎症を軽減し、脂肪肝の進行を抑制します。ビタミンEはナッツ類や植物油、ビタミンCは柑橘類やブロッコリーに多く含まれています。

  • オメガ3脂肪酸
    魚介類や亜麻仁油に含まれるオメガ3脂肪酸は、肝臓の脂質代謝を改善し、炎症を軽減します。

  • 食物繊維
    腸内環境を整えることで肝臓への負担を軽減します。野菜、果物、全粒穀物に豊富に含まれます。

2. カロリーコントロールの実践

肥満症治療では、適切なカロリーコントロールが極めて重要です。摂取エネルギーが過剰になると、体内に蓄積される脂肪が増え、肝臓への負担が増大します。以下は効果的なカロリーコントロールのポイントです。

  • 適正な摂取カロリーの計算
    一般的に、成人の標準体重1kgあたり25~30kcalが目安です。ただし、患者の活動レベルや健康状態に応じて調整が必要です。

  • 間食の見直し
    間食を完全に排除するのではなく、ナッツや低脂肪ヨーグルトなど健康的な選択肢に置き換えることを推奨します。

  • 糖分の制限
    特に清涼飲料水やスイーツに含まれる精製糖の摂取を控えることが重要です。代替として、フルーツや低糖質のスナックを選びます。

3. 低糖質・低脂質食の導入

肥満症の改善においては、低糖質・低脂質食が有効であることが広く認められています。この食事法は、血糖値の安定化と脂肪肝の改善に効果的です。

  • 糖質の適正化
    主食を白米から玄米や全粒パンに置き換えることで、食後の血糖値上昇を抑制します。また、スナック菓子や加工食品に含まれる過剰な糖分を避けることも重要です。

  • 脂質の質を改善
    揚げ物や加工食品に含まれる飽和脂肪酸を減らし、オリーブオイルや魚介類に含まれる不飽和脂肪酸を摂取することが推奨されます。

4. 継続可能な食事習慣の形成

一時的な食事制限ではなく、継続可能な食事習慣を形成することが治療の鍵です。以下のアプローチが推奨されます。

  • 計画的な食事準備
    忙しい生活の中でも栄養バランスを保つため、週末にまとめて健康的な食事を作り置きする方法が効果的です。

  • 外食時の選択肢
    外食時には、低脂質・低糖質のメニューを選ぶよう心掛けます。焼き物や蒸し物を選ぶことが理想的です。

  • 食事日記の活用
    食事内容を記録することで、摂取カロリーや栄養バランスを把握し、改善点を見つけることができます。

5. 脂肪肝の栄養療法で一番大事な事

脂肪肝の栄養療法において最も大事な事は、何を食べるかではなく・・・
実は何を食べないか、何をしないか・・・になります。

過剰な糖分をとらない事が一番需要です。
また液体での糖分摂取、つまりジュースなどは最も脂肪肝形成を促進します。
糖分とはここでは主にショ糖、果糖、果糖ブドウ糖液糖を指します。

糖分摂取と脂肪肝形成の関係

糖分摂取は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)や代謝異常関連脂肪性肝疾患(MASLD)の発症および進行に大きく寄与する要因の一つです。特に、過剰な果糖や精製された糖質の摂取が脂肪肝形成に与える影響が多くの研究で示されています。

1. 糖分摂取が肝臓に与える影響

1-1. 過剰な糖分摂取による脂肪蓄積
  • 糖分(特に果糖)は、肝臓で代謝される割合が高い物質です。過剰に摂取された糖分は、肝臓内で脂肪酸に変換され、これが中性脂肪として蓄積します(デノボ脂肪合成)。
  • 果糖はインスリンの調節を受けないため、過剰摂取すると脂肪酸の合成が抑制されず、脂肪肝の形成を促進します。
1-2. インスリン抵抗性の悪化
  • 過剰な糖分摂取はインスリン抵抗性を引き起こし、肝臓での糖代謝に異常をきたします。この結果、さらに多くの脂肪が肝臓に蓄積されます。
1-3. 炎症と酸化ストレス
  • 糖分の過剰摂取により、肝臓での活性酸素種(ROS)の生成が増加します。これにより、慢性的な炎症が引き起こされ、肝細胞の損傷や脂肪肝の進行が促進されます。

2. 特に影響が大きい糖分の種類

2-1. 果糖
  • ソフトドリンクや加工食品に含まれる果糖は、脂肪肝形成の主要な原因の一つとされています。
  • 果糖の過剰摂取は、他の糖分よりもデノボ脂肪合成を大幅に増加させます。
2-2. シンプルな糖類(精製糖)
  • 白砂糖や高果糖コーンシロップ(HFCS)などの精製糖は、肝臓で効率的に脂肪として蓄積されます。

3. 糖分摂取に関連する臨床研究

研究1: 果糖と脂肪肝
  • 1日50g以上の果糖を摂取する人は、NAFLDのリスクが大幅に増加することが示されています。
研究2: ソフトドリンクの摂取
  • 毎日ソフトドリンクを摂取する習慣がある人は、脂肪肝発症のリスクが40%以上増加するというデータがあります。

4. 糖分摂取制限による改善効果

4-1. 肝脂肪の減少
  • 糖分摂取を制限することで、肝臓の脂肪蓄積が顕著に減少します。低糖質ダイエットは、NAFLD患者の肝機能改善に効果があるとされています。
4-2. インスリン感受性の改善
  • 糖分制限によりインスリン感受性が向上し、肝臓での脂肪合成が抑制されます。
4-3. 炎症と酸化ストレスの軽減
  • 糖分を減らすことで、肝臓内の炎症や酸化ストレスが軽減され、肝細胞の修復が促進されます。

5. 糖分摂取制限の実践方法

  1. 清涼飲料水の回避
    • 水や無糖のお茶を飲む習慣をつける。
  2. 加工食品の制限
    • ソースやスナック菓子など、糖分を多く含む食品を控える。
  3. 天然糖分の適度な摂取
    • 果物の摂取量を制限しつつ、ビタミンや食物繊維の摂取も考慮。

まとめ

糖分摂取は脂肪肝形成に大きな影響を与える要因の一つです。特に果糖や精製糖の過剰摂取は、肝臓での脂肪蓄積を増加させ、NAFLDやMASLDの進行リスクを高めます。糖分摂取を制限することは、脂肪肝の予防および治療において非常に効果的な手段であり、食事療法の中心的な戦略として推奨されます。

運動療法

運動療法もまた、肥満症治療において欠かせない要素です。

1. 運動療法の役割と効果

運動療法は、体重を減少させるだけでなく、肝臓内に蓄積した脂肪を減らし、代謝を改善することで肝臓疾患の予防・治療に寄与します。以下のような効果が科学的に認められています。

  • 内臓脂肪の減少
    運動は皮下脂肪だけでなく、内臓脂肪を効率的に減少させます。内臓脂肪の減少は、肝臓への脂肪蓄積を抑える直接的な効果を持ちます。

  • インスリン感受性の向上
    有酸素運動はインスリン感受性を改善し、肝臓のインスリン抵抗性を低下させるため、脂肪肝の発症リスクを減少させます。

  • 抗炎症作用
    定期的な運動は、慢性炎症を軽減することで、肝臓の炎症や線維化を抑制します。

  • エネルギーバランスの改善
    消費カロリーを増加させることで、摂取カロリーとのバランスを保ちやすくします。

2. 有酸素運動の実践方法

有酸素運動は、肝臓内に蓄積した脂肪を燃焼させる最も効果的な方法の一つです。
以下は、日常生活に取り入れやすい有酸素運動の例とその具体的な効果です。

  • ウォーキング
    毎日30分から1時間程度のウォーキングは、初心者にも取り組みやすく、継続可能な運動です。脂肪燃焼の最適な心拍数(最大心拍数の50~70%)を維持することで、脂肪肝の改善に効果的です。

  • ジョギングやランニング
    より強度の高い運動を希望する場合、ジョギングやランニングが適しています。週3~5回、1回あたり20~30分間行うことで、脂肪燃焼を効率的に促進します。

  • サイクリング
    関節への負担が少ないため、体重過多の方にもおすすめの運動です。屋外でも室内のエアロバイクでも取り組むことができます。

  • スイミング
    水中運動は全身を使うため、エネルギー消費が大きく、また関節に優しい運動です。

3. 筋力トレーニングの重要性

筋力トレーニングは、有酸素運動と組み合わせることで、基礎代謝を向上させ、長期的なエネルギー消費を増加させます。筋肉量を増やすことで、肝臓に蓄積する脂肪の減少をさらに促進します。

  • 自重トレーニング
    プッシュアップ、スクワット、ランジなど、器具を使わずに行える運動は、初心者にも適しています。これらの運動は全身の筋肉を効率よく鍛えることが可能です。

  • ウエイトトレーニング
    ダンベルやバーベルを使用したトレーニングは、筋力を向上させ、エネルギー消費を増加させるために効果的です。ジムでの指導を受けながら行うことが推奨されます。

  • 体幹トレーニング
    プランクや腹筋運動は、体幹部の筋力を強化し、姿勢の改善や運動パフォーマンスの向上につながります。

4. 継続可能な運動習慣の形成

運動療法を成功させるためには、無理なく継続できる運動計画を立てることが重要です。以下のアプローチが有効です。

  • スケジュールの確立
    毎日または週3~5回、決まった時間に運動することで、習慣化しやすくなります。忙しい生活の中でも、短時間でできる運動を選ぶと効果的です。

  • 活動量のモニタリング
    フィットネストラッカーやスマートウォッチを活用して、消費カロリーや運動時間を記録することで、モチベーションを維持できます。

  • グループ運動
    家族や友人と一緒に運動することで、楽しみながら続けられる環境を整えます。

  • 目標設定
    短期的な目標(例:1週間に5回運動をする)と長期的な目標(例:6か月で体脂肪率を5%減らす)を設定し、進捗を評価することが推奨されます。

運動療法は、肥満症の改善と肝臓疾患の予防において強力なツールです。肝臓内科の専門医の指導のもと、個別に最適化された運動計画を実施することで、長期的な健康を実現できます。

薬物療法

薬物療法は、肥満症治療の中核を担うことがあります。特に以下の薬剤が使用されます:

  • GIP/GLP-1受容体作動薬: この薬剤は腸管ホルモンGLP-1の作用を模倣し、食欲抑制とエネルギー消費の増加を促進します。これにより体重減少だけでなく、肝臓脂肪の蓄積を抑制します。後述。

  • オルリスタット: 消化酵素リパーゼを阻害することで、食事中の脂肪吸収を抑制します。これにより、摂取カロリーを減少させ、体重減少をサポートします。

  • ピオグリタゾン(アクトス): 肝臓内の脂肪蓄積や炎症を軽減し、線維化の進行を抑制します。

  • エゼチミブ: 小腸でのコレステロール吸収を抑制し、脂肪肝の改善に寄与します。脂質異常症の治療に広く用いられる一方で、肥満や脂肪肝の合併症を持つ患者に対しても有効です。

  • パルモディア(ペマフィブラート): フィブラート系薬剤であり、トリグリセリドを低下させ、肝臓脂肪蓄積を改善する作用があります。特に脂質異常症を伴う患者に有効です。

  • ビタミンE: 抗酸化作用を持ち、MASHの炎症を軽減することが示されています。

  • SGLT2阻害薬: 糖尿病治療薬として開発されましたが、脂肪肝改善効果が期待される薬剤です。

これらの薬剤は、患者の状態に応じて選択されます。薬物療法の選択には、治療目標や患者の併存疾患が考慮されます。

外科的治療

肥満症の重症例では、外科的治療が検討される場合があります。以下は代表的な手術法です:

  • 胃縮小術: 胃の容量を縮小することで、摂取カロリーを減少させます。

  • 胃バイパス術: 胃と腸の一部を短絡させ、吸収されるカロリーを大幅に削減します。

  • スリーブ状胃切除術: 胃の大部分を切除することで、食欲ホルモンの分泌を抑えます。

これらの手術は劇的な体重減少をもたらすと同時に、脂肪肝やMASLDの改善にも寄与します。

新たな治療法の展望

近年、肥満症治療の新たな選択肢として、以下のような方法が研究されています:

  • 内視鏡的治療: 胃内バルーンなどの非侵襲的手法が開発されています。

  • 腸内細菌叢の改善: 腸内細菌を調整することで、肥満や脂肪肝を改善する試みが進行中です。

  • 遺伝子治療: 肥満に関連する遺伝子を標的とした新しい治療法が研究されています。

定期的なフォローアップ

肥満症治療において、治療効果を維持するためには定期的なフォローアップが欠かせません。体重や体組成、肝臓の状態を定期的にモニタリングし、必要に応じて治療プランを調整します。

GIP/GLP-1受容体作動薬について

肝臓内科での肥満治療におけるGIP/GLP-1受容体作動薬

GIP/GLP-1受容体作動薬は、肥満治療や糖尿病治療において注目されている新しい薬剤クラスです。特に肝臓内科では、肥満症および非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)や代謝異常関連脂肪性肝疾患(MASLD)の治療における有用性が研究されています。

 

1. GIP/GLP-1受容体作動薬とは?

GIP(胃抑制ペプチド)とGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は、食事後に腸管から分泌されるホルモン(インクレチン)の一種です。これらのホルモンは、以下のような作用を持ちます:

  • GLP-1: インスリン分泌の促進、食欲抑制、胃排出の遅延
  • GIP: インスリン分泌促進および脂質代謝の調整

GIP/GLP-1受容体作動薬は、この2つのホルモンの効果を同時に引き出すよう設計されており、特に肥満症と脂肪肝の治療に効果を発揮します。

2. 肥満治療における作用機序

GIP/GLP-1受容体作動薬は、以下のメカニズムで肥満や脂肪肝の改善を促します:

  1. 食欲抑制
    中枢神経系の視床下部に作用し、食欲を抑制します。その結果、カロリー摂取量が減少し、体重が減少します。

  2. エネルギー消費の増加
    基礎代謝を向上させることで、脂肪の分解を促進します。

  3. 脂肪肝の改善
    肝臓の脂肪蓄積を抑制し、炎症や線維化のリスクを低減します。特にGLP-1の作用により、肝臓内の脂質代謝が改善されることが示されています。

  4. 血糖値の改善
    血糖値を安定させ、糖尿病患者にも有益な効果をもたらします。これにより、糖代謝の異常が原因となる肝疾患の進行を防ぎます。

3. 主なGIP/GLP-1受容体作動薬

  1. チルゼパチド(Tirzepatide)

    • 初のGIP/GLP-1二重受容体作動薬として承認。
    • 肥満治療において、臨床試験で平均15%以上の体重減少が報告されています。
    • 肝臓内脂肪の減少効果も確認されており、MASLDやMASHの治療に期待されています。
    • マンジャロ、ゼップバウンドがあり、ゼップバウンドに肥満症治療の適応が有ります。
  2. セマグルチド(Semaglutide)(GLP-1受容体作動薬)

    • GIPを含まないGLP-1単独作用薬ですが、脂肪肝の改善と体重減少に高い効果が認められています。
    • ウゴービ、リベルサス、オゼンピックがあり、ウゴービに肥満症治療の適応が有ります

4. チルセパチドの臨床効果

  1. 体重減少
    チルゼパチドを用いた試験では、治療開始から約1年で体重が15%以上減少した患者が多く、従来の治療法を上回る結果が得られています。

  2. 脂肪肝の改善
    肝臓内脂肪の蓄積が顕著に減少し、NAFLDやMASLDの進行を抑えることが確認されています。

  3. 心血管リスクの低減
    肥満や脂肪肝に関連する高血圧や高脂血症の改善にも寄与します。

5. チルセパチドの副作用と注意点

  1. 副作用
    最も一般的な副作用として、吐き気や嘔吐、便秘、下痢、腹痛、消化不良、食欲低下、注射部位の紅斑、そう痒感、疼痛、腫脹等が報告されています。
    これらは通常、治療を継続することや注射手技や注射部位の変更で軽減します。
    また頻度は低いですが低血糖(頻度不明)、急性膵炎(0.1%未満)、胆嚢炎(頻度不明)、胆管炎(0.1%未満)、胆汁うっ滞性黄疸(頻度不明)、アナフィラキシー、血管性浮腫(頻度不明)の報告もされています。

  2. 禁忌
    膵炎の既往歴がある方や、妊娠中の方は使用を控える必要があります。
    膵炎に関しては同成分であるマンジャロの使用での死亡例の報告も海外ではされており、注意が必要です。
    また、GLP-1受容体作動薬に対する過敏症がある場合も禁忌です。

  3. 医師の指導下での使用
    ゼップバウンドは強力な治療効果を持つ一方で、誤った使用は健康を損なうリスクを伴います。必ず医師の指導のもとで使用してください。

6. チルセパチドの肝臓内科における位置づけ

GIP/GLP-1受容体作動薬は、従来の治療法で十分な効果が得られない肥満症や脂肪肝患者に対して、非常に有効な治療選択肢となります。特にMASLDやMASHの早期治療において、その多面的な作用は肝疾患の進行を防ぎ、患者の生活の質を向上させる可能性があります。

肝臓内科では、患者の状態に合わせた薬剤選択と適切なモニタリングが重要です。医師との相談を通じて、安全かつ効果的な治療計画を策定することが推奨されます。

肝臓内科での肥満症治療がもたらす効果

肝臓内科で肥満症治療を受けることにより、以下の効果が期待されます。

  1. 肝臓疾患の予防
    MASLDやMASHの進行を防ぎ、肝硬変や肝がんのリスクを低減します。

  2. メタボリックシンドロームの改善
    肥満に関連する高血圧や糖尿病、高脂血症のコントロールに寄与します。

  3. 全身の健康改善
    体重減少は関節負担の軽減や睡眠時無呼吸症候群の改善にもつながります。

早期治療の重要性

肥満症および肝臓疾患は、進行すればするほど治療が難しくなります。肝臓内科では、患者一人ひとりの状態に応じたオーダーメイド治療を提供し、健康な生活への回帰を目指します。定期的な健康診断や血液検査を通じて、自身の肝臓の状態を把握することが重要です。

肝臓内科クリニックにおける肥満治療のスケジュール

肝臓内科クリニックにおいて肥満治療を実施するための標準的な治療例です。
患者の個別性を考慮しつつ、効率的かつ体系的な治療を提供するための指針を示します。

1. 初診時

目的:

患者の全体的な健康状態を把握し、肥満症および関連疾患の有無を確認します。

実施項目:

  1. 問診

    • 現在の症状、生活習慣、食事内容、運動習慣を詳細に確認。

    • 合併症(糖尿病、高血圧、脂質異常症)の有無をチェック。

  2. 身体計測

    • 体重、身長、BMI、腹囲を測定。

    • InBodyを用いて体脂肪量、筋肉量、内臓脂肪面積(VFA)を評価。

  3. 血液検査

    • 基本項目(血糖値、HbA1c、脂質、肝機能:AST、ALT、γ-GTP)

    • 必要に応じ肝繊維化マーカー

  4. 画像診断

    • 腹部超音波、フィブロスキャンで肝臓の脂肪蓄積および線維化を評価。

  5. 診断と治療方針の共有

    • MASLD/MASHの有無を説明。

    • 治療目標を患者と共有し、期待される効果を説明。

2. 初期治療期間(1–2か月)

目的:

生活習慣の改善を中心に、肥満および脂肪肝の進行を抑制する。

実施項目:

  1. 栄養療法の指導

    • 管理栄養士による個別指導。

    • 低糖質・低脂質のバランス食を提案。

    • 食事記録の指導と定期的な評価。

  2. 運動療法の開始

    • 中強度の有酸素運動を推奨(例:ウォーキング、週150分以上)。

    • 筋力トレーニングを取り入れる計画を策定。

  3. 薬物療法の検討

    • 必要に応じて、GIP/GLP-1受容体作動薬やエゼチミブ、パルモディアの使用を開始。

    • 使用薬剤の効果と副作用をモニタリング。

  4. 患者教育

    • 肥満症および脂肪肝に関するパンフレットの提供。

    • 定期的な体重・食事記録の重要性を説明。

  5. 血液検査

    • 基本項目(血糖値、HbA1c、脂質、肝機能:AST、ALT、γ-GTP)

    • 必要に応じ肝繊維化マーカー

  6. 身体計測

    • 体重、身長、BMI、腹囲を測定。

    • InBodyを用いて体脂肪量、筋肉量、内臓脂肪面積(VFA)を評価

3. 中間評価(3か月目)

目的:

治療効果を評価し、治療計画を見直す。

実施項目:

  1. 再検査

    • 血液検査(肝機能、脂質プロファイル、HbA1c、繊維化マーカー)。

    • InBodyによる体組成の再評価。

    • 腹部超音波、フィブロスキャンで肝臓の変化を確認。

  2. 治療効果の評価

    • 体重減少目標(初期体重の5%以上)達成状況を確認。

    • 肝機能改善(AST、ALTの低下)を評価。

  3. 治療計画の調整

    • 目標未達の場合は、薬物療法を強化。

    • 運動内容の見直しや追加指導を実施。

4. 長期フォローアップ(6か月目以降)

目的:

治療効果を維持し、長期的な健康改善を図る。

実施項目:

  1. 定期検診

    • 3–6か月ごとに血液検査およびInBody、フィブロスキャンによる評価を実施。

    • 合併症(糖尿病、高血圧)の進行リスクをモニタリング。

  2. 薬物療法の調整

    • 治療効果が安定している場合は減薬を検討。

    • 新たな薬剤が必要な場合は適宜追加。

  3. 運動および栄養指導の継続

    • 患者のライフスタイルに合わせた運動・食事計画の再提案。

    • 成功例を共有し、モチベーションを維持。

  4. 長期的な治療目標の再設定

    • 目標体重の維持。

    • 肝機能の正常化および脂肪肝の完全改善を目指す。

参考文献

  1. "Metabolic Dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease (MASLD): A New Paradigm" - PubMed

  2. "Pathophysiology of Non-Alcoholic Fatty Liver Disease" - Lancet Gastroenterology & Hepatology

  3. "Clinical Impact of GLP-1 Receptor Agonists in Obesity and Fatty Liver" - Journal of Hepatology

  4. "Efficacy of Pemafibrate in Hypertriglyceridemia and Fatty Liver" - American Journal of Medicine

  5. "Advances in Bariatric Surgery for NAFLD" - Obesity Surgery Journal

まとめ

肥満症は肝臓疾患と密接に関連しており、適切な診断と治療が求められます。
肝臓内科では、最新の診断技術と治療法を駆使して、患者一人ひとりに最適な医療を提供しています。
MASLDやMASHの早期発見・早期治療により、健康な生活を取り戻すことが可能です。
肝臓内科での肥満治療を検討している方は、ぜひ専門医にご相談ください。

著者
東長崎駅前内科クリニック 院長 吉良文孝
資格
日本内科学会認定 認定内科医
日本消化器病学会認定 消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会認定 内視鏡専門医
日本肝臓学会認定 肝臓専門医
日本消化管学会認定 胃腸科指導医
日本糖尿病学会
日本肥満学会
 
経歴
平成15年 東京慈恵会医科大学 卒業
平成15年 東京警察病院
平成23年 JCHO東京新宿メディカルセンター
平成29年 株式会社サイキンソーCMEO
平成30年 東長崎駅前内科クリニック開院
 
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