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目次
腹部は部位によって9か所に分けることができます。
右季肋部、心窩部、左季肋部、右側腹部、臍部、左側腹部、右下腹部、下腹部(正中)、左下腹部。
痛みの場所によって想定される疾患が異なります。
1つの部位だけではなく、複数の部位にまたがることや痛みの部位が移動することもあります。
みぞおちには様々な臓器があり、心窩部痛と一言に行っても色々な疾患の可能性があります。
など
心窩部痛も一緒に起こることも多い場所です
左季肋部は右に比べると想定される疾患が少なめです
胃や大腸以外にも小腸や血管の病気が含まれてきます
主に大腸の痛みであることは多い部位です
「おなかが痛い」といった場合、痛い部位の近くに原因となる臓器がある場合と、痛い場所と実際の病気のある臓器が離れている場合とがあります。、
よく遭遇する例ですと、みぞおちの痛みの場合、近くにある胃が原因の場合もありますが、急性虫垂炎や心筋梗塞でもみぞおちの痛みを自覚することがあります。
腹痛の診断は難しいことがありますので、自己判断ではなく、専門の医師の診察を受けることをお勧めします。
「何となくおなか全体もしくは真ん中付近が痛い」などの時は内臓痛を考えます
胃や腸が引っ張られる、収縮する、張るなどの刺激で出現します。
自律神経が関係しているため、痛み以外に冷や汗、ふらつき、嘔気嘔吐などの症状が出ることがあります。
例としてウイルス性胃腸炎の痛みは内臓痛に該当します
「おなかのここが痛い」と痛みの場所が比較的はっきりしている場合、押したら痛いなどの場合に体性痛を考えます。
病気のある臓器の炎症や機械的刺激によって痛みを感じます。
この痛みの場合は、原因となる臓器と痛みの場所は近いです。
歩く、咳などで響くといった症状の場合も耐性痛を考えます。
急性虫垂炎の時の右下腹部痛や憩室炎の際の痛みはこれに該当します。
体性痛でている状況は積極的に治療が必要なケースが多々あります。また痛みや診察の所見が強い時は、腹膜へ炎症が広がっている可能性もあり、必要に応じ入院施設のある病院への紹介を考慮することもあります。
原因となる臓器と実際の痛みの場所が全く異なるときに関連痛を想定します。
簡単にいうと頭(脳神経)の勘違いであたかも別の場所が痛い様に感じてしまう状態です。
関連痛の代表例として心筋梗塞の際に心窩部痛(みぞおちの痛み)がでることがあります。
痛みのでかたによってもある程度の推測ができます。
胃や腸の痛みの場合は食事前後で痛みが変わるケースがあります。
歩くと痛い、体を動かすと痛い、深呼吸で痛い場合は炎症が強い疾患が存在していることがあります。
間欠痛(痛い時と痛くない時がある)の場合は胃や腸の疾患を考えます。また持続痛(ずっといたい)の場合は炎症がある場合や消化器疾患以外のものを考えることが多いです。
痛くて眠れない、途中で起きるなど睡眠を妨げる痛みなどは比較的強い痛みと判断します。炎症などがあることもあります。
集中している時は気にならない痛みなどは、比較的様子を見ることができる症状です。
この様な情報からでもある程度の判断をしていきます。
「急におなかが痛くなった」という場合は、急ぐものとそうでないものが混ざっています。
一概に緊急性が高い、重度の病気と言うわけではありません。
経過をみて症状の変化を確認する場合もあります。
徐々に悪化傾向である場合は悪化にスピードにもよりますが、きちんと検査や治療を受けたほうが良い場合が多いです。
これは緊急の病気が隠れていることは少ないですが、悪性疾患などの場合、比較的症状の進行がゆっくりなので注意が必要です。
数年来の同じ症状である場合、悪性疾患は考えにくくなります。
改善傾向の場合は慌てずに経過を見ることが多くありますが、症状が再燃することもあるので定期的な通院をお願いすることもあります。
38℃超えるような熱がある場合が炎症を伴う疾患を想定します。 発熱に関しても悪化傾向なのか?改善傾向なのか?いつから熱があるのか?などで考えるものが変わってきます よく見かけるウイルス性胃腸炎の場合、発熱は1日程度で治まることが多いですが、大腸憩室炎の様な炎症の強い疾患は数日続くことがあります。
胃、食道、十二指腸の様な上部消化管の疾患を考えます。
嘔吐が継続している場合は、食事の摂取状況によって総合病院への紹介を検討します。
赤い便(血便)、黒い便(黒色便、タール便)、緑色の便の様な色の変化で想定するものが変わります。 赤い便(血便)の場合は大腸の病気を、黒い便(黒色便、タール便)の場合は胃や十二指腸の病気を想定します。 いずれのケースもちょっと付くくらいのものは心配ないケースが多いです。
便秘や下痢があるのかどうかも重要です。 硬い便なのか?軟かい便なのか?どちらもあるのか? 排便は数日おきなのか?1日に何回もあるのか?
背中が痛い、肩甲骨が痛い、お尻が痛い、肩が痛いなど「おなかの痛み」以外の痛みがないかどうかでも疾患を考えます。 背中が痛い場合は膵臓や食道、腎臓の病気、肩が痛い場合は胆嚢や心臓、と言ったような感じです。
今までの病気の既往、手術歴の有無、内服薬・サプリの服用状況、排尿の状態、睡眠の状態、皮膚の状態、婦人科的に症状、整形的な症状など色々な情報でおなかの痛みを分析していきます。
ここまで「おなかが痛い」に関して解説をしました。 ここまでの内容は、患者さんから聞く問診の内容になります。 実は問診をキチンと聞くだけで疾患の絞り込みがかなりできます。 消化器の専門医院の場合は、スタッフも含めて消化器問診がしっかりしています。 「おなかさわらないのですか?」とたまに聞かれることがありますが、消化器専門で長い間診察を行っている熟練している医師の場合、効率的な問診のみで得られる情報である程度診断に予想をつけることができます。 沢山問診を聞かなくても、経験的に短い時間で最大限の情報を得ることができる道筋が見えている場合が多いです。
問診のみの診断で問題がないケースもかなりありますが、問診である程度可能性を絞った後に、診察や検査で最終的に確定をしていくこともあります。
触診が有用なのは炎症の疑いがあるときになります。 触診では、しこりがふれるのか?、腹膜への炎症の広がりがあるのか?などを診ていきます。
触診を行わず検査にいきなり進むケースもあります。 その時は触診で得られる情報が少ないと判断した場合になります。
炎症の有無、肝障害、膵酵素異常や腎機能障害などが検査可能です。 採血をじっしすることで、腹部の疾患以外の病気を検索することも可能です。
胃潰瘍、胃炎、食道炎、十二指腸潰瘍など食道・胃・十二指腸の疾患を検査できます。 心窩部痛の検査の場合は胃カメラはかかせません。
腸炎、炎症性腸疾患、憩室、虚血性腸炎、一部の小腸疾患の診断に使用します。 大腸は腹部のどこの部位でも症状を出しうるので、みぞおちの痛みなどでも実施することが有ります。
腹部の超音波では肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓、一部の膀胱や前立腺疾患などを診ることができます。胆石などの診断に有用です。胃や腸は他の検査の方が有用であるケースが多々あります。 心窩部痛みの検査の際は胃カメラと同時に実施することもあります。
心筋梗塞の際は心エコーを実施します。
婦人科臓器の場合は婦人科での経膣超音波の実施をお願いしています。
腸閉塞、便秘、腸管穿孔などを疑った際に使用します。 確定診断につながる情報を得られることはおおくはありませんが、簡便に実施ができるのが強みです。 レントゲンで診断できない疾患も多数あるので、他の検査の実施も検討します。
小腸疾患全般に使用しますが、腸が狭窄している場合は実施できません。 小腸の疾患は比較的稀なので、胃カメラ・大腸カメラ・腹部エコーを実施しても不明な場合に考慮されたりします。 CTを事前に実施するケースもあります。
尿路結石など泌尿器疾患の際に実施します。簡便に検査ができるのが強みです。
心筋梗塞、狭心症などを疑った場合に実施します。
多くの情報が得られ、CTでないと確定診断がつかない事もあります。 腹部の場合は造影剤を使用しての検査をお勧めすることが多いです。CTにも不得意な分野があり、胃や腸に関しては内視鏡検査の方が効果的です。 造影剤はアレルギーのある方、腎機能の悪い方には使用できません。
婦人科臓器の検査、胆嚢膵臓の検査の際などに実施することがあります。 MRIは撮影の種類が豊富なため、どのような条件で取るかが大事です。 そのためある程度経験豊富な医師のもとで検査指示を受けたほうが良いでしょう。