難聴者の
長期聴覚管理

補聴器の装用の有無にかかわらず、
難聴者の長期経過観察は非常に大切なことです。
それは、難聴の進行をできるだけ遅くしたいですし、
実は難聴は心理面でもご本人の大きな影響を
与えるからです。

補聴器を装用している方の場合、補聴器を初めて使用する場合は必要な音の強さの70%くらいの大きさから始め、徐々に上げていくことは「補聴器を購入するまで」の中でお伝えしたと思います。なぜなら、最初から100%で使うと音が大きすぎてうるさく感じるので、音が聞こえることに徐々に慣らしていくためです。慣れるまでは1~2か月ごとに調整します。ある程度安定してくれば、半年ごとに聴力検査と音場検査を行います。

聴力検査では難聴が進行していないかを、音場検査では補聴器装用時と装用していない時を比較して補聴器の効果を調べます。また、補聴器が故障していないかも調べます。その時に音の強さが物足りない場合は音を強く調整します。また、騒音の中での使用状況を伺い、雑音をしっかり抑制しているかなど、必要があれば調整します。聴力が悪化している場合にも補聴器の再調整が必要です。その他、補聴器に耳垢が詰まったりして聞こえが悪くなっていることもありますので、きれいにしてもらうことも必要です。

補聴器を使っていない方でも
定期的な検査をお勧めします。

年を取れば耳が遠くなるものと放っておかないでください。難聴が進行したのではなく単に耳垢が詰まっただけのこともありますし、滲出性中耳炎を発症していることもあります。早く気づいて早く治療することが楽しい一生を過ごすうえで非常に大切なことです。

聞こえが悪いという症状は、他人はもちろんですが、実はご本人にとっても分かりづらい症状です。聞こえが悪くても外見からは分かりませんし、一人暮らしで会話が少ない生活だったら会話も少なく、聞こえの悪いことに気づきにくいのです。ですが、聞こえが悪いと、小さい声や不明瞭な声は聞き取りにくく、テレビを見たり、会合に参加することがおっくうになったり、電話にも出ないようになってしまいます。家族とも言葉の行き違いで時には口論となり、会話の必要があるときは緊張し、イライラしたりもします。そうして社会との関わりが徐々に減り、家族と話すのさえ面倒になったりします。聞こえが悪いということで負い目を感じ、抑うつ状態や被害妄想に陥りやすく、次第に引きこもりがちになり孤独な生活を送るようになります。難聴は生活に不便なだけでなく、心理面に与える影響もとても大きいのです。

年齢を重ねて近くが見にくくなると眼鏡を購入するのは誰でも普通に行っていることです。それと同じに、年齢を重ねて聞こえが悪くなったら誰でも普通に補聴器を装用する…そんな時代がやってくるといいなあと思っています。

→次は【補聴器Q&A】

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