甲状腺疾患

甲状腺(こうじょうせん)疾患とは、甲状腺の異常や障害によって引き起こされる病気の総称です。
甲状腺には、身体の新陳代謝をつかさどる甲状腺ホルモンを分泌するという大きな働きがありますが、甲状腺疾患は、大きく、その甲状腺機能に異常が生じる場合とそうでない場合の2つに分けることができます。
そして、前者の甲状腺機能に異常が生じる場合は、さらに、甲状腺ホルモンの合成・分泌が過剰になる甲状腺機能亢進症(こうしんしょう)と、甲状腺ホルモンの合成・分泌が低下する甲状腺機能低下症に分けることができます。
一方、後者の甲状腺機能に異常がない場合は、腫瘍性の疾患が考えられます。

甲状腺機能亢進症(バゼドウ病)

甲状腺機能に異常が生じる場合の多くはバセドウ病です。
バセドウ病は、甲状腺刺激ホルモン受容体に対する自己抗体が過剰に作られてしまって、これが甲状腺を刺激するために甲状腺ホルモンが大量に分泌される免疫に関する病気の1つで、およそ1:5の割合で女性に多く見られます。
バセドウ病の原因の1つに家族性があるので、親や兄弟などの身内にバセドウ病に罹っている方がいらっしゃる場合には注意をしておく必要があります。
また、ストレスが原因の1つとも言われています。

バセドウ病の症状

バセドウ病の身体的な症状としては、喉ぼとけ辺りが突き出て腫れてくるほか、眼球が突出してきて目つきが鋭くなってきます。
この2つがバセドウ病の大きな特徴なのですが、特に高齢の男性の場合には甲状腺が腫れない場合も見受けられます。
症状が進むにつれて、皮膚が黒ずむようになったり、手先の震えが全身に広がり、膝がガクガクするような症状も目立つようになってきます。
また、食欲が旺盛になるのに次第に身体がやせていくもの特徴的な症状です。
ときに、下痢(げり)を起こしやすくなったりします。
また、人によっては、発汗や身体全身にかゆみの症状が現れたり、非常に汗をかきやすくなったりします。
このほか、疲労感の増加や身体のだるさ、イライラ感、集中力の低下、不眠症、脱毛――などさまざまな症状を呈します。
さらに、心臓の機能も亢進するため、静かにしているときでも脈拍数が1分間に100回以上になる頻脈(ひんみゃく)が起こり、動悸(どうき)を覚えますが、動脈硬化があると心房細動(しんぼうさいどう)による不整脈なども生じます。
なお、女性に多く見られると申し上げましたが、高齢者では必ずしもそうではありません。

バセドウ病の診断

採血検査を行って、血液中の甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン受容体抗体、チロキシン結合グロブリンを測定することで診断は容易に行えます。

バセドウ病の治療

バセドウ病の治療には、大きくわけて、
①薬物療法(抗甲状腺薬の投与)
②アイソトープ(放射線)治療
③外科療法(手術)――の3つがあります。

①薬物療法(抗甲状腺薬の投与)

日本では、多くの場合、最初にこの治療を考慮します。
抗甲状腺薬を服用し、甲状腺の働きを抑えます。
薬物療法には、外来で治療が簡単に行えるメリットがありますが、デメリットとして、治療期間が長くかかってしまうことや、白血球減少症や薬疹などの副作用が生じる場合があることなどが挙げられます。
抗甲状腺薬の服用により、甲状腺ホルモンはおよそ数カ月で徐々に正常値となりますので、その後は少しずつ内服薬を減らしていきます。

数年の服用で、お薬をやめても正常値を保っていられれば、投薬治療は成功です。
最初は、1~2週間に1回の通院が必要ですが、安定してくればおよそ1カ月に1回の通院で治療を続けていくことができます。

②アイソトープ(放射線)治療

放射性ヨードを内服し、甲状腺の一部の組織を放射線で破壊する、アメリカでは最も一般的な治療法です。
甲状腺薬の投与を行っても治りにくいという方や手術後に再発した方、心臓などの合併症がある方に適している治療法です。
放射性ヨードを飲むだけの簡単な治療であることがメリットですが、治療を開始する2週間ほど前から、ヨウ素を多く含む食品(海藻類など)の摂取制限が必要になります。
また、治療を行う医療機関や服用するアイソトープの量により、1週間程度の入院が必要な場合もあります。
アイソトープ治療は、治療が簡単で薬物療法に比べて治療期間が短いというメリットがありますが、妊娠を希望している方や妊娠中・授乳中の方には行えません。
また、施術後、歳をとるにつれ甲状腺機能低下を発症(晩発性甲状腺機能低下症)する可能性が高いです。
その場合は、逆に、甲状腺ホルモンの補充が必要となることもあります。

③外科療法(手術)

甲状腺 手術首の付け根を切開して、甲状腺の一部を取り除く治療です。
抗甲状腺薬で副作用がある方、甲状腺の腫れが大きい方、薬物療法で治りにくい方、甲状腺腫瘍を合併している方、早期に治療する必要がある社会的事情をお持ちの方の場合に選択されることがあります。
短期間で甲状腺機能が正常になる、甲状腺の大きな方でも治療可能といったメリットがありますが、入院が必要である、手術の瘢痕(はんこん)が残る、稀に反回神経麻痺(まひ)や副甲状腺機能低下症といった手術による合併症の可能がある、声帯の近くを手術するため、声がかすれたり出にくくなる例がごく稀にある――といったデメリットもあります。

なお、バセドウ病以外で、甲状腺機能亢進症を示す病気として、亜急性(あきゅうせい)甲状腺炎、破壊性甲状腺炎、甲状腺腺腫(プランマー病)――などがあります。

甲状腺機能低下症

多くは、橋本病とも呼ばれる慢性甲状腺炎です。
甲状腺を破壊してしまう自己抗体が過剰に作られることによって甲状腺からの甲状腺ホルモン分泌が低下してしまう、本来は免疫に関係する病気で、30代~50代の女性に多くみられます。
その多くが長期間にわたり徐々に甲状腺機能が低下していく病気と考えられています。
また、高齢者の場合には、関節リウマチやシェーグレン症候群といった自己免疫疾患の併発がよく見られます。

甲状腺機能低下症の症状

甲状腺機能低下の症状は、喉ぼとけ辺りの首が腫れてきた、無気力でゆううつになった、体重が増えてむくんできた――など、甲状腺の腫れとその機能低下による多彩な症状が見られますが、慢性甲状腺炎をお持ちの方の大部分は無症状です。
これらの症状は徐々に起こってくる上、その感じ方に個人差があるため、健康診断で首の腫れを指摘されたりして気づかれる場合も少なくありません。

甲状腺機能低下症の診断

血液中の甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、甲状腺に対する自己抗体(抗サイログロブリン抗体、抗甲状腺過酸化酵素抗体)、チロキシン結合グロブリン――を測定すれば診断は容易です。
また、脱力感が特に強い場合は、筋肉の損傷を示す血液中のCPKが異常高値をとることがあります。
なお、慢性甲状腺炎で治療が必要になる方は、甲状腺機能が低下している方、甲状腺が腫れて大きくなることにより喉(のど)に違和感がある方です。

甲状腺機能低下症の治療

①甲状腺機能が低下している方

不足している甲状腺ホルモン薬を服用(補充)します。
同じ甲状腺機能の治療薬でもバセドウ病に使う抗甲状腺薬は効果がありません。
甲状腺ホルモン薬は、最初は少量ずつ服用し、徐々に増やしてその方の身体に合った量を調整していきます。
急激に過剰な投与を行うと、心筋梗塞(しんきんこうそく)などの急性冠動脈(かんどうみゃく)疾患を引き起こすので投与は慎重に進めていきます。
適正な維持量が決定されたら、一生、これを服用します。
補充療法ですから、根本的に病気が治ったわけではないので、症状が改善したからといって減量あるいは中止すると1~2カ月内には症状が悪化します。
体調がよくなったからといってお薬の服用を中止してしまう方がいらっしゃいますが、身体に足りない分を薬で補充してバランスを取っているわけですから、毎日決められた量を必ず服用しましょう。
一方、甲状腺の腫れが小さく、甲状腺機能が低下していない方の場合は、薬の必要はありません。
しかし、病気が進行し甲状腺の働きが低下して、甲状腺ホルモンが不足するようになる可能性もありますから、3~6カ月に1回くらいは必ず受診してください。

②甲状腺が腫大し、喉に違和感がある方

甲状腺ホルモン剤を服用して様子をみますが、非常に大きくなり気管を圧迫してしまう場合は手術も必要になります。

なお、高齢者では、徐脈(じょみゃく)、寒がり、難聴、肥満、声がれ、便秘、脱毛、皮膚乾燥――など、通常みられる状態に似た症状を示すので、放置されているケースがしばしばみられ、血清コレステロールが高値となり、時に重症な動脈硬化症を来していることがありますので、注意をしてください。


甲状腺腫瘍

甲状腺腫瘍には良性腫瘍とがんがあります。
首の前の、喉ぼとけの下にある甲状腺が、様々な原因で大きくなったものを総称して甲状腺腫瘍といいます。
良性腫瘍のほとんどは「濾胞腺腫(ろほうせんしゅ)」です。
濾胞腺腫は良性腫瘍で治療を要しないことがほとんどなのですが、濾胞がんを完全に否定できるわけではないので、基本的に治療は行わず、外来で経過を観察します。
また、甲状腺腫瘍は、甲状腺の細胞が自然に増殖してできるものですが、このほか外部から甲状腺が刺激されることで過形成を起こして、甲状腺が腫れることがあります。
しかし、これは腫瘍ではなく、腺腫様甲状腺腫(せんしゅようこうじょうせんしゅ)として甲状腺腫瘍とは区別しています。

甲状腺腫瘍の症状

首の腫れだけで、特に痛みを伴わない場合がほとんどです。
また、発声をつかさどる反回神経に影響した場合は声がれが生じることもあります。

甲状腺腫瘍の診断

甲状腺腫瘍

主な検査は触診とエコー(超音波検査)です。
甲状腺がんは、しこりが気管に癒着(ゆちゃく)していて動きが悪いので、甲状腺疾患の専門家なら触るだけで分かることもあります。
エコー検査は、ベッドの上で仰向けになって首を伸ばした姿勢をとって、測定装置を表面から当てて甲状腺の中の様子を観察します。
超音波を使っての検査なので、放射線被曝(ひばく)の心配はありません。
触診やエコーの結果、悪性が疑われる場合は、穿刺吸引細胞診(せんしきゅういんさいぼうしん)という検査を行うことがあります。
これは腫瘍に向かって針を穿刺し、腫瘍から一部の細胞を取ってその細胞の性質を調べるものです。
また、血液検査を行って、甲状腺ホルモンや甲状腺が産生しているサイログロブリンを測定することがあります。
稀に甲状腺腫瘍が甲状腺ホルモンを過剰に作ってしまうことがあるので、甲状腺ホルモンに異常がないか調べるための検査です。

甲状腺腫瘍の治療

甲状腺腫瘍をお薬で治すことはできません。
そこで、良性腫瘍でこれといって気になる症状がないようならば、そのまま放置しておいてもかまいません。
ただし、時に急速に大きくなったり、腺腫様甲状腺腫だと思っていたら濾胞がんだったということもあり得るので、年に1回は検査を受けてください。
なお、良性の「嚢胞」の場合、針を刺して、内容物を吸引して小さくすることができますが、吸引して1度小さくしても、また液体が貯留して元の大きさに戻ってしまうこともあるので、治療法については良く検討する必要があります。
悪性の場合やその可能性がある場合、あるいは良性でも腫瘍が非常に大きかった場合には、外科的治療(手術)をお勧めすることになります。

①甲状腺がん

高齢者の方には甲状腺が腫れてくる病気がたくさんあります。
通常は良性の腺腫あるいは腺腫様甲状腺腫で、とくに治療を要するものではありませんが、時には甲状腺がんである場合もあります。
甲状腺にできるがんには乳頭(にゅうとう)がん、濾胞(ろほう)がん、未分化(みぶんか)がん、髄様(ずいよう)がん――などさまざまな種類があり、あまり悪性化しないものから、発見してから数カ月後には死亡する極めて悪性のものまであります。
このほか、悪性リンパ腫が甲状腺にできる場合もあります。
高齢者の方では、予後の悪い未分化がんが多いのが特徴です。
未分化がんは、気道や血管に閉塞(へいそく)を生じ、頸部(けいぶ)の神経を傷つけ、さらに転移をして外科的治療を困難にします。
放射線治療や抗がん薬を使う化学療法の選択もありますが、一時的には軽快してもすぐに再燃するのが一般的です。
なお、がんの種類は、針を刺して細胞組織を採取し検査する針生検で病理診断をつけます。
針生検は危険を伴うので、専門医が行います。

②甲状腺原発悪性リンパ腫

甲状腺を原発巣とするリンパ腫です。
この病気の基礎疾患に慢性甲状腺炎(橋本病)があることが多く、免疫系と関連があると言われています。
急速にリンパ腫が大きくなり、触れると甲状腺が硬くなっているのが分かります。
病理学的に検査し、治療の第一選択は一般的には化学療法で、効果を示します。
急速に腫大する場合には、気道の閉塞などを起こし、しばしば重篤になります。


亜急性甲状腺炎

甲状腺の病気は、甲状腺が腫れても痛みはない場合がほとんどですが、亜急性甲状腺炎は痛みがあります。
この病気は、30~40歳代の女性に圧倒的に多い病気です。
亜急性甲状腺炎の原因ははっきりしませんが、鼻や喉の炎症に続いて起こることが多くウイルスが関与しているのではないかと言われています。

亜急性甲状腺炎の症状

亜急性甲状腺炎亜急性甲状腺炎の症状は、甲状腺の腫れと痛みです。
まず、左右どちらか一方が硬く腫れ、押すと痛みがあります。
この痛みと腫れは、部位が左から右へ、右から左へと移動することがあります。
その意味で非常に特徴的な経過をたどる病気と言ってよいでしょう。
痛みの程度は、あくびをしたり首を伸ばしたりするとちょっと痛いといった軽いものから、少し首に触っただけで飛び上がるほど痛いといった重いものまでさまざまです。

また、微熱から40℃近い高熱が出ることもあります。
亜急性甲状腺炎の場合は、炎症によって甲状腺の組織が破壊されることで、甲状腺に蓄えられていた甲状腺ホルモンが急激に血液中に流れ出すので、血液中の甲状腺ホルモンの濃度が高くなります。
一過性にバセドウ病のような、動悸、汗をかく――といった症状が出ることもありますが、適切な治療により改善していきます。

亜急性甲状腺炎の治療

自然に治る病気なので対症療法が主です。
熱と痛みに対してはサリチル酸製剤を投与します。
痛みがひどく重症な時は、副腎皮質ステロイド薬を投与することもあります。
この場合は痛みや発熱は1~2日で消えますが、薬の減量や中止が早すぎると症状が再燃するので、比較的長期に服用することになります。
動悸に対しては、β(ベータ)遮断薬が使われることもあります。

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